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FRP製品を笑顔と共に
2025-02-11

インフラ老朽化課題解決に向けたFRP適用の可能性【FRPエンジニアによるコラム】より

近年、インフラの老朽化に伴う腐食が深刻化し、様々な問題を引き起こしています。福島第一原発処理水海洋放出設備の配管腐食による漏水や、埼玉県八潮市で発生した下水管の腐食によると考えられる道路陥没事故は、その一例といえます。

これらの概要を述べた後、FRP適用の可能性について考えます。

福島第一原発処理水海洋放出設備の配管腐食による漏水

東京電力福島第一原発では、海洋放出設備における腐食が問題視されています。特に、海水を希釈設備に送るステンレス製配管等において腐食が確認されているという報道があります。

・関連情報:福島第1原発の処理水設備 腐食相次ぐ(静岡新聞)

原因の一つとして、海水に含まれる塩化物イオンによる溶接部を中心としたステンレスの腐食が考えられます。

 

埼玉県八潮市で発生した下水管の腐食による道路陥没

2025年1月28日、埼玉県八潮市の交差点で道路が陥没し、トラックが転落する事故が発生しました。2025年2月10日現在、陥没事故に巻き込まれた運転手の方について懸命の捜索活動が続けられています。

この原因は、下水道管の中で下水の流れが遅くなる段差や曲がり角で硫酸塩還元細菌の働きによって硫化水素が発生し、それが空気中に放出されることで硫黄酸化細菌と鉄酸化細菌の働きによる酸化反応で生じた硫酸が、水道管の構成材料であるコンクリートを溶かした可能性が指摘されています。

・関連情報:コンクリート腐食のメカニズム(ビックリート製品協会)

福島第一原発での腐食と八潮での陥没事故に共通すると推測される問題の原因

福島第一原発と八潮市の事故に共通する問題の原因は、“長期間にわたって徐々に進行する構造部材の腐食”です。

設計段階である程度の腐食発生は想定されていたはずですが、何年、場合によっては何十年という長期間にわたって少しずつ進行する腐食現象のすべてを予測することは難しいことも珍しくありません。

そして点検も容易ではありません。例えばコンクリート材料の腐食状況はpHの中性への変化でとらえるという手段はありますが、全国で49万km(2022年時点)にも及ぶ下水道管渠のすべての腐食状況を把握するのは困難と推測します。

このようにして腐食状況を把握できずに少しずつ腐食の進んだインフラ構造物が突然、水圧や上部からの荷重に耐えられずに破損したというのが、今回ご紹介した例に共通している事象と考えます。

一言でいえばリスクを想定しきれなかったということではないでしょうか。

・参照情報:下水道の維持管理(国土交通省)

 

当社が対応するFRP劣化診断で見えてきた設計と製造の問題

前述に関連したものとして設計や製造に関する問題があります。

当社に対する耐薬品FRP製タンク、配管などの劣化診断が10年前頃より急増しています。

様々な事例がありますが、劣化診断で明らかとなったことで共通しているのは、GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)の物性値や特性を見誤った設計、さらには当該材料を適切に扱うための積層構成や積層時の圧力等の不適切な製造条件の設定です。

このように、長期間にわたる腐食予測の難しさ以外にも、構造物を作るということについて技術的な課題が多く存在するのは紛れもない事実なのです。

今回問題となった構造部材についても、類似の問題が無かったとは言い切れないと考えています。

 

FRPでこれらの問題解決に対応できる可能性があるものは何か

FRP(繊維強化プラスチック)は耐腐食性に優れるだけでなく、様々な形状に加工できるという特徴があります。これらの特性を活かすことで、インフラをはじめとした構造物の腐食問題の解決に貢献できる可能性があります。

例えば、チューブ状に形の整えられたマトリックス樹脂含浸済みのガラス繊維を既設管の中に入れて、内径側から熱と圧力をかけて当該樹脂を硬化させることで、新たな内壁面を形成させる管更生はその代表例です。既設管をそのまま活用できるため工期とコストを抑えられる可能性もあります。これにより、大規模な改修工事を伴うことなく、インフラの延命化を図ることができます。

大口径のものについてはFRPではありませんが、類似のコンセプトであるSPR工法があります。

これはスパイラル形状のポリ塩化ビニルを入れ、外側をモルタルで埋めるという技術です。

新たな内壁面を更生させることで既設管構造の腐食性媒体との接触を断ち、耐腐食性を回復させることが可能です。

このようにある程度の年数を経過した構造物については、腐食媒体との接触領域を一括で更生させるといった考え方が必要なのかもしれません。

 

構造物の老朽化に取り組む当社の“老朽化設備の長寿命化対策支援”

当社は半世紀以上のFRPの経験と最新分析機器を有するR&Dセンターの機能を融合させ、老朽化設備の長寿命化対策支援に取り組んでおります。

当該支援は、今回ご紹介したようなインフラの老朽化対策にも応用できる側面があると考えています。

当社としてもインフラ老朽化問題解決に何か貢献できることはないか、と試行錯誤している最中です。

 

腐食による構造物の劣化にお悩みの方がおりましたら、お気軽にお問い合わせください。

 

お問い合わせページはこちら

 

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