第六十五回:FRP製品の真実~FRP職人にしか分からない感覚的なことへの 検証

株式会社 FRPカジ メールマガジン

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2026年9月1日

 

第六十五回:FRP製品の真実~FRP職人にしか分からない感覚的なことへの

検証

 

<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

・FRP製品の真実~FRP職人だけが知る感覚

 

前号のメルマガでは、FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組での、劣化診断に適用する非破壊検査導入に向けた検証と適用の課題についてご紹介しました。

 

 

今号では当社が感覚論の定量化を目的としたR&Dセンター設立のきっかけとなった、

FRP職人だけが知る感覚について述べたいと思います。

 

【FRP職人にしか分からない感覚】

 

この感覚のお話しは、おそらくGFRPの世界で特にハンドレイアップ法に携わっている方が、実感する内容となります。

 

初歩的な事柄から、全て感覚論が支配すと言っても過言ではないと思います。

私が思いつくだけで下記のようなことがあります。

 

‐生産型への離型処理

‐強化繊維として使用するガラスマット類の裁断

‐積層時の強化繊維配置

‐マトリックス樹脂への促進剤や硬化剤の配合

‐成形を行う人数

‐成形を行う道具

‐脱型のタイミング

‐脱型後の加工

 

上記に関して1点ずつ詳細に説明いたしますが、

その対象はあくまでも一般成形品(ゲルコート製品)といたします。

 

〈生産型への離型処理〉

 

一般成形品の場合に多くはFRP型を使用します。

ここに使用する離型剤は固形や液体等があり、ゲルコート面の光沢度や表面粗さ、

形状等により各社で使い分けています。

 

ここからが感覚論で、分かりやすい例とすると、

自動車のWAXかけを自ら行った方は固形の場合も液状の場合も、

“定量的な工程管理は行わず”に感覚で車体に塗り込み、拭き取ります。

基本的にFRP生産型へのアプローチも同様です。

 

作業者は脱型後の状況が頭や体で覚えているので、

最悪の離型不良を起こさないように感覚的に作業します。

 

ただし、定量的に離型処理を行っている企業がある可能性も併せて述べておきます。

 

〈強化繊維として使用するガラスマット類の裁断〉

 

強化繊維として一般的なチョップドストランドマット(CSM)、ロービングクロス(RC)、サフェーシングマット(SM)を念頭に解説します。

 

生産型と一言でいっても最終的な成型体によって様々な形状や大きさのものがあり、

その形状を適切に覆う、つまり積層できるように強化繊維のカットパターンを設定します。

 

最終的に隙間なくはまるパズルと異なり、

FRP成型においては複雑な形状を隙間なく、かつ重なる部分を最小化するよう、

強化繊維を複数の形状にカットしたカットパターンを用意する必要があります。

 

加えてFRP成形型は曲面を含む三次元形状をしているのが一般的で、

二次元の平面形状が多いパズルでは通常起こらない、

厚み方向の形状に追従させるという複雑な変形が強化繊維の積層時に求められます。

 

FRPの強化繊維の中で主たるものであるCSMが様々な方向に配向した繊維で構成されるのは、

このような複雑な形状に追従するための性質、すなわちドレープ性を発現させることにその狙いがあるのです。

 

FRPが適切な強度を示すためには、できる限り強化繊維を切れ目なく使用するのが基本ですが、

既述の通り三次元形状に追従させるには複数のカットパターンの強化繊維を用いることも珍しくありません。

 

この場合、強化繊維同士を“どんつけ“してはいけません。これらを防ぐために必ず強化繊維同士の重ね代を設け、

FRPに外から力が加わった際、この重ね代を経由して応力を伝達させる機構を維持させることが重要です。

 

このような繊細な形状のカットパターンに基づいて強化繊維を裁断するにあたっては、

裁断機を使用する企業もありますが、多くはFRP職人が手作業で型紙等を用いて裁断します。

 

しかも裁断の手間を省くため複数枚の強化繊維を同時に手で裁断することも珍しくありません。

 

裁断にはカッターナイフの使用が主流であるためミリ単位の誤差は普通で、多くをまとめて裁断する際は数十ミリの寸法ずれを示すこともあります。

 

このようなカットパターンの輪郭寸法のずれがあったとしても、

FRP職人は後工程であるマトリックス樹脂含浸時の力のかけ具合、

さらには現場で対応可能と想定される材料のドレープ性や重ね代寸法を念頭に、

手修正によって誤差を含む裁断済み強化繊維を使用できると判断できれば次工程の積層に進みます。

 

ここでいう対応可能と想定するものとして、

裁断した際にでる端材をまさしくパズルのように配置して使用することや、

適当な大きさに裁断して積層時にハサミや手でちぎり使用するなどが挙げられます。

 

上記の柔軟対応は経験あるFRP職人の感覚がないと適切には対応できません。

 

 

〈積層時の強化繊維配置〉

 

次に裁断と重複する部分もある積層時の強化繊維配置についてです。

 

FRP成型体を得るため、

生産型の上に様々な形状のカットパターンに裁断された強化繊維をパズルの如く配置し、

必要に応じた重ね代をつける等の積層を行います。

 

これらはFRP職人が現場を見ながら自らの経験に基づいた感覚に沿って、

その場で進めていきます。

 

製品によっては重ね代の端部を伸ばしたりして誤魔化さないとけない場合もあり、

それを実施する、しないも感覚的なのものになります。

 

強化繊維が不足しているのを気付かずに積層作業を進めたことで、その箇所のプライ数が減少して強化繊維量が減り、

想定したFRPの材料特性に満たないことは避けなければなりません。

経験豊富なFRP職人はどのような箇所で強化繊維が不足する問題が生じやすいかといった傾向を感覚的に把握しており、

積層工程中に複数回にわたって積層枚数の不足有無の確認を行うこともあります。

 

 

今号では、FRP職人の感覚的な部分に依存するものとして、離型処理と強化繊維の裁断・配置についてご紹介しました。

 

次号メルマガではFRP職人だけが知る感覚として、マトリックス樹脂や成形作業に関してご紹介したいと思います。