株式会社 FRPカジ メールマガジン
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2026年1月5日
第五十七回:現地施工で見られるビス系ビニルエステルの硬化不良発生
~ 積層下地やライニング下地の水滴等~
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・FRP製品の真実~現地施工で見られるビス系ビニルエステルの硬化不良発生~積層下地やライニング下地の水滴等
前回のメルマガではビスフェノール系(ビス系)ビニルエステルの硬化不良の初歩的要因として、強化材(チョップドストランドマット等)が水等を吸収していることにより起こり得る原因や対策等についてご紹介しました。
今回は現地施工時における、積層下地やライニング下地の水滴等が付着することによる当該硬化不良発生について述べてみたいと思います。
【現地施工におけるビスフェノール系ビニルエステル樹脂硬化不良の初歩的要因】
現地施工において、ビスフェノール系ビニルエステル樹脂硬化不良の初歩的要因として、
以下の6点が挙げられることは既に述べました。
‐硬化剤添加量過不足
‐促進剤添加量過不足と手順違い(3液性の場合)
‐硬化剤添加後の撹拌不足
‐強化材(チョップドストランドマット等)が水等を吸収している
‐積層下地やライニング下地の水滴等
‐樹脂塗布用の刷毛・ローラー類に水やアセトンが除去されていない
※参照コラム
第五十三回:ビス系ビニルエステルの硬化不良発生
https://x.gd/CQUKH
今回は5点目の“積層下地やライニング下地の水滴等”ついて解説します。
【積層下地やライニング下地への水滴等の付着原因】
積層下地やライニング下地への水滴等が付着してしまう主な原因を以下の通り述べます。
‐一般的な施工現場である屋外での、雨や湿気、結露の影響
‐屋内の施工現場における、湿度や屋外との温度差による結露の影響
‐施工現場の屋内外問わない、薬液タンクピット内等での薬液の漏洩
‐硬化剤や添加剤、アセトン等のこぼれや飛散
‐薬液タンク内ケレン後に確認される、浸透している薬液の残留や漏出
最後に述べた、ケレン後に初めて確認される薬液の残留や漏出は、作業開始前段階での確認が困難であるため、特に厄介です。本点については詳細を後述します。
どのケースにおいてもFRPオーバーレイやライニング前にアセトン等で拭き取るかケレンのやり直しが必要となります。
【積層下地やライニング下地の水滴等の付着リスクとその確認方法】
成形作業前の段階で積層下地やライニング下地の水滴等を確認するには、触診とチリ紙のような水分を吸収しやすいものを接触させることによる確認が必要です。
触診では、外観ではわからない(わかりにくい)濡れや薬液等の浸透による凹凸、軟化している個所などの存在を確認します。
さらに水分を吸収しやすいちり紙を、下地に密着させることで水分の吸収有無を目視にて判断することを合わせて行います。
これらの確認が不十分で水滴等が積層下地やライニング下地に残留している場合、
前回も述べた通りマトリックス樹脂を含侵させた後の“白化”という現象で表面化します。
硬化遅延やゲル化の危険因子となり得る白化現象を起こした箇所は、部分的にハサミ等で取り除くか、強化材の大きさによってはそれ全体を除去します。
白化現象につながる溶液の強化材への付着と、それによる硬化反応の遅延やゲル化に関する当社の検証結果については、以下の技術レポートをご参照ください。
※関連技術レポート
ビニルエステル/過酸化物による FRP 硬化への pH の影響
白化個所の除去を適切に行わずに積層すると、
硬化不良は層間方向(厚さ方向)に拡大します。
よって、水滴等の付着は現場作業のやり直しを強いる大変リスクの大きなものといえます。
【積層下地やライニング下地の水滴等の残留を防ぐための当社の取り組み】
コンクリートへのライニングであれば目視と触診で判断がつきますが、薬液タンク等の内面が腐食している場合には、特に注意が必要です。
薬液によりますが、浸透液が残留していた場合にはライニング後に表面が硬化していてもそのままライニング部が剥離して脱落する危険があるためです。
よって、内溶液の確認と特徴を理解しておくことが必要です。
ここでは積層下地やライニング下地の水滴等が付着させないための当社の取り組みについて、以下の通りご紹介します。
‐雨や湿気の影響を受けないように下地を事前に工場にてビニール等で養生する。
‐夏場や温度や湿度が高い現場作業が想定される場合、
作業者の汗の材料への付着を防ぐため極力肌の露出を減らす。
‐成形作業に入る前に、目視、触診にて下地の状態を確認し、必要に応じてアセトン等で拭き取る。
‐目視では判断できないような湿潤領域には、チリ紙を表面に接触させ、液体成分の吸収有無を確認する。
‐下地への浸透リスクのある薬液の場合、ケレン時に下地状態を確認した上で、残留液をなくした後に揮発性の高いアセトン等で脱脂と当該残留液の除去を徹底する。
‐脱脂後にライニングに使用するマトリックス樹脂にてプライマー処理を行い、残留液の時間経過に伴う漏出リスクを低減する。
以上の通り下地の水滴等の残留を回避するため、
下地の目視や触診による確認に加え、残留液の浸透性などの特性を踏まえたケレン後の確認、そして必要に応じたプライマー処理といった、
経験に加え、現場状況に応じた臨機応変な対応を当社では徹底しています。
【積層下地やライニング下地の水滴等が付着で生じる事象例】
私の経験を踏まえての事例をご紹介します。
上述した原因の最後に記載した、薬液タンク内ケレン後に浸透している薬液が残留していることに関するものです。
既述の白化現象は目視で確認可能ですが、
薬液タンク内ケレン後に薬液が漏出する場合、その事象が発生するのはタンク内面ケレン後の腐食部除去を行った壁面となるため、目視で捉えることは困難です。
よって下地に浸透した水滴等による硬化不良を防ぐには、
水滴の元となる液体等がどの深さまで浸透しているかは目視や触診での判別できないことを前提に、
できる限り深くケレンを行うことが求められます。
薬液のFRPタンクへの浸透状況やメカニズムを理解されていない企業にとって盲点となっているのは、
このような液体の深さ方向への浸透の危険性です。
深さ方向に液体が浸透すると、ケレン後も継続的に当該液が漏出し、まさに水滴が付着した状態になります。
この状態を理解せずにライニング後を行うと、
ライニングしたFRPの最外層である表面は硬化しますが、
下地表面に残留、または漏出した水滴等によりマトリックス樹脂の硬化不良が発生し、
ライニング底面部と下地の間で剥離してしまう可能性が高まります。
実際、他社がライニング施工した現場で、上記のようなライニング材の剥離事象を多く目にしました。
これは長年の現場作業を経験した者にしか理解できない現象で、教科書や参考書等には記述がありません。
しかし、施工後に外観では白化現象が認められず、
かつ、ライニングした最外層の表面が硬度もあり問題ないと判断しても、
下地とライニングした界面で生じた硬化不良によって剥がれおちるという事象は決して珍しいものではありません。
この危険性を理解しないまま施工を進めることは、
最悪の場合、タンクや槽等に薬液を再充填した後に内壁のライニング材が脱落するという、
全作業のやり直しという事態につながりかねません。
同時にライニング施工を依頼する側にもコストや工期だけでなく、
リスク回避に必要な技術を考慮した判断基準を有することが重要であると考えます。
いずれにしても、施工する側はここまで述べてきたような事前準備や現場での確認作業や判断によって、リスクを最小限に抑えることを常に意識することが大事だと思います。
今号ではビスフェノール系ビニルエステルの硬化不良の初歩的要因として、積層下地やライニング下地の水滴等が付着で生じる問題についてご説明させていただきました。
次号では硬化不良の初歩的要因として、樹脂塗布用の刷毛・ローラー類に水やアセトンが除去されていない場合に起こる要因についてご紹介します。
FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。











