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第四十回:FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組 ~目視による劣化診断法

株式会社 FRPカジ メールマガジン

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2024年8月1日

 

第四十回:FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~目視による劣化診断法

 

<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

・FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~当社独自の

目視による劣化診断法の深掘り

 

前回メルマガではFRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組について当社独自の劣化診断法2として、バーコル硬さ計を応用した手法についてご紹介しました。

 

今回はFRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組である、当社独自の目視による劣化診断法を深堀りの上でご紹介します。

 

 

一般的にFRP製耐食機器においての目視検査は、

検査指針にあるように、

白化、膨潤、ボイド、割れなどを確認することが基本的な診断です。

 

当社の劣化診断においても、

目視検査は最も重要と考えております。

 

上述した基本的な診断に加えて、

例えば内容液が酸や塩基なのかによってFRP耐食面(接液面・接気面)の腐食状態に違いがあるため、

見方を変える事が必要です。

 

 

〈代表的な薬液によるFRP腐食形態の違い〉

 

FRP製タンクで保管されることの多い薬液によって確認される、

FRP腐食形態の違いについて述べます。

 

 

塩酸によるFRP腐食形態

 

水疱のようにドーム状に膨潤が見られます。

塩酸水溶液から気化した塩化水素により、非接液面にも同様の現象が確認できます。

このような状態の場合は2ミリ程度の耐食層にまで浸透している可能性が高いです。

 

 

水酸化ナトリウム水溶液(苛性ソーダ)によるFRP腐食形態

 

接液面に有機繊維を使用しているので、使用期間の長さに応じて削られたように白く擦り減る様子が確認されます。

このような擦り減りが下層のガラス繊維に達している場合は更に白化が顕著になり、薬液の浸透がさらに加速される傾向にあります。

 

 

硝フッ酸によるFRP腐食形態

 

内容液にガラスを侵すフッ酸が入っているので、接液面には有機繊維や炭素繊維が使用されため、目視だと劣化状況が1番分かりづらいのが特徴です。

 

フッ酸の影響により表面がクラックのように割れて、そこから下層に薬液が浸透するという劣化形態を示します。

そのため、クラックの発見が重要になりますが、

特に接液面のFRP強化繊維が炭素繊維の場合、色が黒い事に加え、

場合によっては平織りクロスを使用しているとクラック箇所を目視で見つけるのが困難です。

 

加えて、クラックから浸透した薬液が層間にそのまま残存しているため、

目視検査中に漏出することもあることから、確認作業には危険を伴います。

 

 

このように薬液によって腐食形態が異なることが分かります。

 

 

〈薬液が浸透したFRP製タンク内で見られる共通の事象〉

 

薬液の種類によらず、薬液がFRP内に浸透した場合に共通してみられる事象があります。

 

それがFRPタンク内の異臭です。

 

劣化診断の前には薬液を抜いた上で水洗浄を行いますが

薬液がタンクの内壁面に浸透している場合、

タンク内部で強い異臭が発生していることがあります。

 

壁面に浸透した薬液が水洗浄後も残留し、

その薬液自身が揮発する、またはFRPのマトリックス樹脂が薬液によって加水分解して生じた低分子化した化合物に由来するものであると考えます。

 

ガス検知管を用いて薬液ガス濃度を計測することで、

当該濃度を劣化診断の一指標とすることも検討しております。

 

さらに、この異臭は防毒マスクをすると作業者は気が付かないことがあるため、

安全性の観点からも今後、劣化診断工程に取り入れていきたいと考えています。

 

 

<FRP腐食で注意すべき付帯設備>

 

上述したのはタンク内面の事象ですが、付帯設備に目を配る必要があります。

 

代表的なものがFRP配管ライン(以下、配管)です。

 

劣化診断ではタンクばかりに目が行きがちですが、付帯設備である配管こそ目視検査を重点的に実施しなければなりません。

 

以前より当社では、塩酸や水酸化ナトリウム(苛性ソーダ)の配管150A以下の劣化に関して発信をしています。

150A以下のサイズで配管を製作する場合、

直管とエルボを繋ぐには輪切り同士をドン付けして、

外面だけをオーバーレイをするのが一例です。

 

これは内面のつなぎ目に隙間があり“割れている”のと同じ状況です。

 

塩酸であれば薬液そのものに加え、揮発したガスにより、つなぎ目の隙間から配管断面に浸透して強化繊維であるガラス繊維を溶解します。

 

また、苛性ソーダなどの塩基性水溶液も同様に、薬液が当該隙間より浸透してガラス繊維を溶解します。

これはタンク内面も同様で、液面計取付座に使用の20Aや25Aの内面シェル部をタンク内壁よりも突き出したままにすると、断面より薬液が浸透してガラス繊維を溶解します。

そして浸透をつづけた薬液が、遂には外面の離れた箇所より漏洩することがほとんどです。

 

 

薬液の浸透によって白化する配管

苛性ソーダや塩酸によって劣化した配管は、外観により白化現象を確認できます。

この時点でこれらの薬液浸透はある程度進んでおり、それが外観異常として認められたと考えます。

当社では配管の目視検査経験はありませんが、例えば硝フッ酸等、他の薬液でも類似の現象が認められると予想しています。

 

仮にタンクや付帯設備で薬液の漏洩が認められたとして、

その原因が漏洩箇所だけにあるとは限らず、

根本的な漏洩の原因は当該箇所から離れた“配管のつなぎ目”である可能性もあります。

 

 

目視による劣化診断で状況を的確に判断するため、

配管などの付帯設備にも配慮することが肝要と考えます。

 

 

今号ではFRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~当社独自の目視による劣化診断法として、目視検査に関して深掘りしてご紹介しました。

 

 

次号メルマガでは、FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組について詳しくご紹介したいと思います。

 

 

FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです