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FRP製品を笑顔と共に

第九回:FRP製品の真実~マンション貯水槽の危機

株式会社 FRPカジ メールマガジン

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┏┏┏┏ ハンドレイアップGFRPの真実

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2022年1月5日

 

第九回: FRP製品の真実~マンション貯水槽の危機

 

 

<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

・FRP製品の真実~ マンション貯水槽の危機

 

 

 

<FRP製品の真実~マンション貯水槽の危機> ━━━━━━━━━

 

前回のメルマガでは薬液漏えい恒久対策支援について、

事業に至った経緯からサービス内容までご紹介しました。

 

 

今回のメルマガでは今年10月にHPにて公開している

「FRPエンジニアによるコラム~マンション貯水槽の危機」と重複してしまいますが、

反響が大きかったためにあらためて、

貯水槽に関する問題概要と人身事故につながらないための劣化診断の要点と対策案、

並びに酸やアルカリを貯蔵する耐食タンクとの違いについてご紹介します。

 

 

 

「マンションの貯水槽が危険だ」

 

私がこれを強く感じたのは今から3カ月ほど前の2021年10月3日、

和歌山市の「紀の川」にかかる水管橋と呼ばれる送水用の橋の一部が、

崩落により6万戸が断水というニュースの中で普段からの劣化診断方法を見た時です。

 

平行して架かる橋からの目視検査によってのみ劣化診断を行っていたことは容易に想像できることであり、

故にあることが頭に浮かびました。

それが冒頭の「マンション貯水槽が危険だ」です。

 

当社には3年ほど前よりマンションや工場の貯水槽・受水槽などのFRP製パネルタンクが地震により崩壊したり、

水漏れが多発していたことによる、補修依頼や問い合わせが増えていたことも、

この連想を現実のものとして認識した一因となったといえます。

 

問い合わせ後に補修だけ行うのは容易ですが、問い合わせ増加の要因を探る事が恒久的な補修を行える根本的な解決策だと感じ、調査に入りました。

 

 

〈メーカー撤退によってマンション貯水槽管理がますます困難に〉

 

マンション貯水槽をはじめとしたFRP製パネルタンクは大手企業が手掛けていましたが、10年ほど前より撤退する企業が増加しています。

業界内での取り決めにより設置後15年間の補償期間はあったようですが、

期間を経過した物件はメーカー関係メンテナンス企業が劣化診断を含め行っています。

 

私も補修依頼が多いために主要メーカーに資料を共有いただきたいと問い合わせをしましたが、

驚いたことに20年、30年前に製造したFRP製パネルタンク製作図面は保管していないとの回答。

さらに驚くことに、メンテナンス企業の劣化診断法は上述した和歌山市内で崩落した水道橋と同様に、

 

「目視検査のみ」

 

との回答でした。

 

 

〈マンション貯水槽に関する劣化診断の現状と迫るリスク〉

 

当社が日常業務で行う劣化診断では、JIS規格がある薬液タンク以外のパネルタンク等に対しても、

膜厚・硬度・特殊カメラによる内部調査等を含めた劣化診断を行い、成果物として検査成績表を発行します。

 

しかし、劣化診断をいくら行っても恒久的な対策にはならず、劣化診断後に何かしらの対応が必要となった場合、

マンションの管理組合や建造物の管理会社の迅速なアクションが必要となります。

 

早急な対応が必要な理由として真っ先に挙げるべきは、最近続発している地震です。

地震により、マンション等の20年以上経過した貯水槽が損傷して漏水が発生し、給水できなくなることに加え、最悪は崩壊して人的被害に及ぶのではないかと危惧されることがその背景にあります。

マンションには小さいお子様や老人の方も多く生活しているため、

崩壊は絶対に避けなければなりません。

 

貯水槽に水が貯蔵されている状態であってもFRPの特性を理解した上で、

目視検査だけでなく、FRP膜厚計により板厚計測・バーコール計により硬度検査・特殊カメラにより天井部マンホールからの内部調査、さらに実際に素手で触手した感覚などしっかりしたメンテナンスを行っていただきたいと思います。

 

次に貯水槽に問題が生じた場合に実施すべき劣化診断と恒久対策について述べたいと思います。

 

 

〈マンション貯水槽に対する劣化診断と恒久対策〉

 

マンション貯水槽の長寿命化を実現するには上述した劣化診断や定期的なメンテナンスは必要不可欠ですが、劣化が露呈した時の対応が1番大事です。

 

パネルタンクの場合、特に劣化の懸念される箇所はパネルとパネルをつなぐフランジ部です。

フランジとフランジの間にパッキン等のシールが入っていますが、

こちらはFRPよりも早く劣化が進行します。

 

しかし、パッキンの劣化を判断するにはパネルを止めているボルト・ナットを取り外す必要があります。

 

本来であればパッキンの状態を確認した上で必要に応じて交換するのが理想的ですが、

パネル間の状態を確認するには分解する必要があることからも、

当該確認作業が困難な場合もあります。

 

この場合、20年経過した時点で貯水槽の側面・底面のフランジ接合部箇所内面をFRPにてオーバーレイを行うという、

内面からの対策を考えるのが妥当と考えます。

 

 

<酸やアルカリを貯蔵する耐食タンクは貯水槽とは異なる>

 

マンションなどの貯水槽のような一般的な貯水槽はパネルタンクと呼ばれ、

一辺が約1メートルのパネルをボルト・ナットにて容量によりレイアウトして組み立てるタイプです。

メーカーでは、同じ形状のパネルをSMC成形などの安価な成形方法によって製造しています。

 

そのため、複数のパネルから構成する構造となる故、

上記のようなパネル間のシーリングという形態をとっているのです。

 

一方、酸やアルカリなどの薬品を貯蔵するFRP製角型耐食タンクは化学プラント等で使用され、

薬品漏れが大事故に繋がるためパネルタイプでなく一体型構造が採用されています。

 

一体型の製品を製造するためには単価が安いとはいえ都度、木型(生産型)を新規で製作する必要があり、

また手作業によるハンドレイアップ成形なので量産は難しく高価になります。

 

それに対し、貯水槽のパネルを成形するようなSMC成形では、初期投資の大きい金型を準備する必要があるものの、

一度製作した金型は使い続けることが可能であるため、

大量生産を前提とすれば一体成形体より安価にできます。

 

 

角型耐食タンクは一体成形のためパネルのような構造材料を分断する不連続面が無く、

FRPによる連続的な構造を有しているため20年経過しても地震などで破壊することはありませんが、

貯蔵する酸やアルカリといった薬品の影響で腐食します。

 

そのため、角型耐食タンクは薬液による劣化現象を、硬度変化やFT-IRによる化学構造変化によって捉え、

しかるべきタイミングでオーバーレイする等の補強を主とした補修対応が恒久対策として不可欠となります。

 

このように双方のメリット・デメリットをはじめとした特徴を考慮した劣化診断結果を踏まえた補修・改修を行う事が、

劣化に対する恒久対策への近道かと考えます。

 

 

今回のメルマガではFRP製品の真実~マンション貯水槽の危機という題目で、

劣化診断の要点と対策案、並びに酸やアルカリを貯蔵する耐食タンクとの違いについてご紹介しました。

 

 

 

次号メルマガでは、FRP製品製造の真実~塩酸貯槽の危機ということについてについて取り上げたいと思います。

 

 

 

FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。