GFRPリサイクルと廃棄物削減に向けた長寿命化への挑戦【FRPエンジニアによるコラム】より
2023年11月1日、NHKにて「解体キングダム」という番組内で、
「巨大風車10基を解体せよ!」
という内容で放送されていました。
FRPエンジニアリングコラムでは、
風力発電向けの風車解体に関する本内容を踏まえ、
GFRP(ガラス繊維強化プラスチック)リサイクルの現状と当社における取組みをご紹介します。
GFRP製の羽は埋め立て処理されることが多い
老朽化により風車を解体するのですが、
羽(ブレード)にあたる部分はGFRP製なので、
小さく刻んだ上で埋め立て処理しかできない状況です。
風車を含む産業界全体で廃棄される現在GFRPは現在1年間で約30万tと推計されており、
密度から考えても鉄に換算すると、
135万t(普通自動車約80万台)に匹敵する量となります。
大学の協力によるGFRPリサイクルへの挑戦
番組内では18年間GFRPリサイクルの研究を行っている大学の方がご紹介され、
特殊なアルコールにGFRPを浸漬して、
マイクロ波を当てることでマトリックス樹脂と強化材のガラス繊維が分離されること。
さらに、分離した強化繊維で再生したGFRP材もご紹介されていました。
このように素晴らしい研究を行っていただいてはいますが、
FRPリサイクルは材料特性故に遅々として進まないのが現状です。
リサイクルは大事ですが、
それより以前に埋め立て処理を削減しない場合の地球への負荷は大問題です。
リサイクルではなく長寿命化という観点がGFRP廃棄物削減に重要
当社では以前よりFRP廃棄物処理事業を展開しています。
FRPと鋼材等を分離し、
FRPは圧縮して極力少ない量での埋め立てを行っています。
さらに、それ以前にFRP製薬液タンクやマンションなどの受水槽は腐食や老朽化で新規に入れ替えるのではなく、
適切な劣化診断を行い、
「長寿命化」
に向け、改修・補修を行っています。
当社R&Dセンターでは技術レポートとして、
50年屋外曝露されたFRPの特性評価」技術資料_ENG-REPORT-015
を公開しています。
50年間屋外に曝露されたFRPについて、
引張特性、バーコル硬度、FT-IR分析(フーリエ変換赤外分光分析)、X線CTによる非破壊分析の各評価を行い、
当該曝露によって生じた特性変化を定量的に明らかにしました。
これにより、FRPを長期間使用するにあたってどのような技術的観点で管理すべきかの一指標を得ることができたと考えます。
早期なFRPリサイクル開発と同時に埋め立て削減に向けた動きが必要かと考えます。
当社の長寿命化に向けた取り組みが、GFRPの廃棄物削減に向けた新たな基軸となるべく、引き続き取り組んでいきたいと思います。