株式会社 FRPカジ メールマガジン
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2022年4月1日
第十二回: FRP製品の真実~苛性ソーダ貯槽の危機 その1
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・FRP製品の真実~ FRP製苛性ソーダ貯槽劣化進行の盲点
<FRP製品の真実~苛性ソーダ貯槽劣化進行の盲点> ━━━━━━━━━
前回のメルマガではFRP製塩酸貯槽劣化状況と劣化診断の要点についてご紹介しました。
今回のメルマガではFRP製苛性ソーダ貯槽劣化進行の盲点をご紹介します。
前回までの第10回、11回では塩酸貯槽劣化について、
深く掘り下げてご紹介しましたが、
理由は天井部落下等による人命に関わるリスクが高いのがその理由です。
今回ご紹介するFRP製苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)貯槽は、
排水処理や薬品中和を行う工場では苛性ソーダ貯槽として、
FRP製を使用する工場は多いといえます。
しかしながら留意すべき点もあります。
それは、苛性ソーダは強アルカリ性のため、
苛性ソーダ貯槽の内壁構造材料であるFRPの強化繊維に、
耐アルカリ性の低いガラス繊維ではなく有機繊維を用いる必要があることです。
化学プラント等ではFRPの内面にPTFEやPVCをライニングするケースも多く見られますが、そちらについては今後ご紹介できたらと考えています。
【FRP製苛性ソーダ貯槽劣化進行の盲点】
既に述べた通り、FRP製苛性ソーダ貯槽の内壁はガラス繊維と有機繊維を強化繊維とし、
マトリックス樹脂はビス系ビニルエステル樹脂を使用した複合材となります。
苛性ソーダ並びにそれを保管する貯槽の構造部材であるFRPの特性をきちんと理解していれば危険はありません。
しかしながら、これらの特性を踏まえた設計要件に対する理解が不十分な状態で製造されたFRP製苛性ソーダ貯槽において、
思わぬ所に落とし穴が存在し、
それによって劣化が進行することがあります。
補修の依頼があったユーザー様に過去の製作図を見せていただくと、
設計の段階では「内壁は有機繊維使用」と謳っていますが、
本体に取り付ける小径フランジ(15A~25A)は強化繊維がガラス繊維のFRP製であり、
シェル内に巻き込む2次成形が難しいためにシェル先端部の有機繊維でのオーバーレイ(被覆処理)が不十分となり、
時間と共にわずかな隙間から苛性ソーダがフランジのガラス繊維に浸透して、腐食を起こします。
もう少し詳しく説明してみたいと思います。
FRP製苛性ソーダ貯槽は薬液を保管する貯槽であるため、
槽内から薬液を取り出すため、必ず槽側面に配管を取り付けます。
この配管接続を行うために取り付けるのが、FRP製ノズルフランジ(以下:フランジ)です。
フランジの口径は設計により異なりますが、
液面計が必要な場合などは15A~25Aと小口径となります。
フランジは槽内部に挿入される状態となるため、
突出したシェル先端部(積層断面)が薬液面に露出することとなります。
シェル先端部にはFRP製フランジの強化繊維であるガラス繊維が露出する状態であるため、
二次成形で最外層に有機繊維でのFRPオーバーレイを施しても、
内用液が僅かなガラス繊維露出部(シェル先端内周部・外周部)より浸透して、
オーバーレイ部内が腐食し、
その結果として槽外面のフランジシェル付近より液漏れが起こります。
尚、フランジ口径が40A以上であればシェル部を槽の内壁に巻き込む形でオーバーレイを施せるので、
ガラス繊維が露出しません。
詳しくは当社ホームページやFRPカジYouTubeチャンネルでもご紹介しているのでご覧ください。
「薬液漏えい恒久対策施工支援」ホームページはこちら。
YouTubeチャンネルはこちら。
当社では上述のFRP製苛性ソーダ貯槽の劣化の傾向を考慮しながら、
FRP製品設計、製造で30年以上の経験を有する当社技術者の専門的かつ客観的知見を踏まえ、
コストや工期の観点から課題のある新規更新ではなく、
今あるものをできる限り生かしながら設備の長寿命化を目指すFRP製苛性ソーダ貯槽の「補修/改修」に対応しています。
今回のメルマガではFRP製品の真実~苛性ソーダ貯槽の危機という題目で、
FRP製苛性ソーダ貯槽劣化進行の盲点についてご紹介しました。
次号メルマガでは、FRP製品製造の真実~FRP製苛性ソーダ貯槽補修法ということについてについて取り上げたいと思います。
FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。