株式会社 FRPカジ メールマガジン
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┏┏┏┏ メッキ/表面処理設備長寿命化のための
┏┏┏┏ 補修/改修へのFRP活用の基礎知識
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2019年11月1日
第六回: FRPによる鋼鉄槽の長寿命化に効果がある
各種ライニング仕様並びに一般的な補修・改修と当社独自
のFRP特殊ライニング工法
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・「補修/改修へのFRP活用の基礎知識」
<補修/改修へのFRP活用の基礎知識> ━━━━━━━━━
FRPを用いた補修/改修の対象のアプリケーション例として、
前回は鋼鉄槽劣化メカニズム・劣化状態・FRPライニング適用による鋼鉄槽劣化の抑制をご紹介しました。
今回はFRPによる鋼鉄槽の長寿命化に効果がある各種ライニング仕様、
並びに一般的な補修・改修と当社独自のFRP特殊ライニング工法についてご紹介したいと思います。
【新規ユニットとしての各種ライニング工法】
‐塩ビライニング
‐ゴムライニング
‐FRPライニング
メッキ/表面処理工場においてよく見かける鋼鉄製槽に対しての新規ユニットとしてのライニング方法としては、上記の3点が一般的です。
この各種ライニング方法でのメリットとしては、
耐薬品性があり現地での施工が容易という点が挙げられますが、
それぞれ課題もあります。
塩ビは「他の仕様と比較して劣化による割れが起こりやすい」
などのリスクが最大の課題といえます。
この材料寿命の制約から結果的に補修・改修頻度が増加し、
長期視点での維持コスト肥大化は不可避といえます。
ゴムライニングは、鋼鉄との接着のよさから腐蝕や継ぎ目からの漏れにより鋼鉄部が薬液により腐蝕した場合に補修が困難という課題があります。
FRPライニングの課題は鋼鉄槽の壁面との剥離です。
この剥離リスクはケレン(表面研磨)の状態でかなり差が出ます。
工場で新規ユニットとして鋼鉄製槽にFRPライニングを施す場合、
通常は1種ケレンを行った上でプライマー処理を施しますが、
これでも鋼鉄とFRPは両者の線膨張係数の違い等により剥離することがあります。
このようにグラインダー等によるケレンだけでは剥離する可能性が高まり、
液漏れの要因となります。
【各種ライニングに対する一般的な補修・改修方法】
どのようなライニングを適用したとしても、長期間使用することによる劣化は不可避です。
ここでは各種ライニングに対する一般的な補修・改修方法をご紹介します。
– 塩ビライニングの補修
割れた部分を塩ビ溶接で行うか割れがひどい場合やピンホール・膨れ箇所は広い範囲を交換します。
塩ビライニングの場合、新規の場合でも溶接部からの薬液浸透が多いため、
割れた部分を溶接にて補修を行っても薬液が溶接部より浸透するリスクは高いのが課題です。
同様に広い箇所の補修においても塩ビシートを溶着し端部を溶接するので、
こちらも上述のリスクは高いといえます。
‐ゴムライニングの補修
腐食箇所等を取り除くかもしくはその上にゴムシートを圧着します。
腐食箇所を取り除き下地をケレンして補修材を塗りますが、これには高い技術が要求されます。
補修必要箇所に対し適切な寸法で対応できる技術者も減少しており、
補修部にゴムシートを圧着する方法が多く見受けられます。
この場合、塩ビライニング同様に補修部端部からの薬液浸透や腐食箇所より浸透した薬液により、
後になってピンホールや膨れが発生する可能性が高いというのが課題です。
もう一つの工法として、
ゴムの表面にFRPのライナーを適用するというものがあります。
この場合FRPのマトリックス樹脂の主剤や硬化剤が原因で、
下地であるゴムライナーを溶解させるケースもあり、
後から施工したFRPライナーが剥離するという問題が発生するリスクがあります。
‐FRPライニングの補修
腐食箇所を取り除き広くケレンしてFRPをオーバーレイします。
FRPライニングでの補修もゴムライニング補修同様に腐食部を取り除き下地をケレンし、
大きめに採寸したFRPにてオーバーレイします。
このような部分的な補修方法の場合、
一度腐食を起こした箇所に薬液がどの範囲まで浸透しているかは分からないため、
補修後に使用を始めると時間差で補修周辺箇所や別の箇所が腐食するという問題が発生する可能性もあります。
【当社独自のFRP特殊ライニング工法について】
当社独自のFRP特殊ライニング工法は新規ユニット向けではなく、
補修・改修を目的とした工法になります。
この工法は、メッキ/表面処理槽設置するコンクリートピットの腐食が激しく通常のライニングが困難であるという環境下で補修・改修を行いたい、
という切実な顧客要望から誕生しました。
1年という研究開発期間を経て、
当該特殊ライニング工法はあらゆる下地材質に対応できる汎用的な技術として確立しました。
従来の補修・改修の考えとは異なり当社独自のFRP特殊ライニング工法は、
上記の下地に依存しないという利点を生かし、
一般的な補修方法である「部分的な補修」ではなく、
「既存の槽内に新規のFRP製の槽を新たに構築する」
という斬新なコンセプトです。
これにより上述した部分的な補修のリスクである、
時間差で補修周辺箇所や別の箇所が腐食する、というリスクを回避することができます。
さらに通常のFRPライニングと比較し十分な厚みを確保することが可能であることにより、鉄鋼槽寿命の延長を実現しています。
また多くの既存設備を活用することにより、
新規ユニット設置よりも低コストかつ、
短納期での対応が可能となっています。
【当社独自のFRP特殊ライニング工法が適した箇所】
以下のような箇所において、当社工法が採用され実績を上げています
‐ゴムライニングのようにFRPとの接着が困難な箇所(当社工法が特に推奨されるケースです)。
‐電気メッキ/表面処理工場のラインにおいて駆動部や複雑な凹凸など、カスタムメイドの形状が必要な箇所。
‐硝酸等によりゼリー状となったFRP槽やコンクリートピット。
今回は鋼鉄槽の長寿命化に効果がある各種ライニング仕様と一般的な補修・改修、並びに当社独自のFRP特殊ライニング工法についてご紹介しました。
最近、長期視点でのトータルコストや保全を考える時期に差し掛かった工場が多いと実感しています。
そのような工場に関係する方々にとってのご参考になればと思います。
次号メルマガでは、当社特殊工法の主役でもあるFRPが用いられた、FRP製槽劣化の特徴について取り上げたいと思います。
設備の老朽化や更新にお悩みの方にとっての一助になれば幸いです。