第六十一回:FRP製品の真実~ FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組 ~薬液の違いによって、劣化の見え方はどう変わるのか

株式会社 FRPカジ メールマガジン

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2026年5月7日

 

第六十一回:FRP製品の真実~ FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組

~薬液の違いによって、劣化の見え方はどう変わるのか

 

<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

・FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~薬液の違いによって、劣化の見え方はどう変わるのか

 

前号のメルマガでは、一般的な劣化診断の場合には、

白化、膨潤、ボイド、割れなど、目に見える異常の有無や程度をもとに整理していくことが多い一方で、

当社ではそれに加えて、薬液の種類、使用環境条件、設備、さらに劣化の進行度合いといった点まで考慮して「読み解く作業」が重要であることを述べました。

 

今号はその中でも、薬液の種類によってFRPの劣化の見え方がどのように変わるのかについてご紹介したいと思います。

 

【薬液の種類によって、外観状態の解釈が変わる】

 

一般的にFRP製耐食機器においての目視検査は、

一般社団法人強化プラスチック協会発行「FRPS C003-2018 ガラス繊維強化プラスチック製耐食機器の性能検査指針」に則り行われています。

 

前回のメルマガでも触れたように、当社でも目視検査を重要視しています。

 

ただし、目視検査で見えてくる外観異常をどう読むかについては、薬液の種類を念頭におかなければ本質を見誤る場合があります。

 

例えば内容液が酸や塩基なのかによってFRP耐食面の腐食状態に違いがあるため、

同じ「白化」「膨れ」「割れ」と見える現象であっても、薬液が異なれば劣化の仕組みや進み方は同じとは限りません。

 

そこで、今回は代表的な薬液である塩酸、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、硝フッ酸について、劣化の特徴を述べたいと思います。

 

【塩酸で見られる劣化の特徴】

 

最初に保管容器や輸送配管にFRPが用いられる代表的な薬剤である塩酸について述べます。

 

塩酸によるFRP腐食形態としては、水疱のようにドーム状に膨潤が見られることがあります。

また、塩酸水溶液から気化した塩化水素により、非接液面にも同様の現象が確認できる場合があります。

塩酸が揮発性の酸であることが背景にあります。

 

このような状態まで劣化が進行している場合では、厚さ2ミリ程度の耐食層の最深部まで塩酸が浸透している可能性が高いと考えています。

 

この場合、耐食層の下層にある非耐食層まで塩酸が浸透していることを想定すべきであり、

よって劣化が急激に進行するリスクがあると認識しなければなりません。

 

薬液が塩酸の場合に重要なのは、その特徴的な劣化外観である「膨潤」を認識することに加え、

接液面だけでなく接気面にも影響が及んでいないか、そして膨潤した時点で非耐食層まで薬液が到達している可能性を考えることにあります。

 

【苛性ソーダで見られる劣化の特徴】

 

次に苛性ソーダについて述べます。

 

水酸化ナトリウム水溶液、いわゆる苛性ソーダによるFRP腐食形態では、

接液面に有機繊維を使用している場合、使用期間の長さに応じて削られたように白く擦り減る様子が確認されます。

さらに、この擦り減りが下層のガラス繊維に達している場合は白化が顕著になり、薬液の浸透がさらに加速する傾向があります。

 

苛性ソーダはガラス繊維を冒す性質があるため、

大変危険な状態です。

 

苛性ソーダの場合、表面の有機繊維を用いた保護層の擦り減り有無だけでなく、

当該層の減肉化によって苛性ソーダへの耐性の低いガラス繊維層に達しているかどうかが大きな判断の分かれ目になります。

 

【硝フッ酸で見られる劣化の特徴】

 

硝フッ酸には内容液にフッ酸が含まれるため、

接液面に有機繊維に加え、極めて高い耐薬品性を示す炭素繊維が使用されることがあり、目視だけでは劣化状況が最も分かりづらいという特徴があります。

 

劣化の特徴は表面のクラックです。

この割れ目から薬液が浸透するという劣化形態を示すためクラックの発見が重要になりますが、

特に接液面の強化繊維が炭素繊維の場合、色が黒いことに加え、平織りクロスを使用しているとクラック箇所を目視で見つけるのが困難です。

 

加えて、クラックから浸透した薬液が層間に残存しているため、目視検査中に漏出することもあり、確認作業には危険を伴います。

 

フッ酸は人体を腐食する毒物であるため、細心の注意が必要です。

 

以上の通り、塩酸、苛性ソーダ、硝フッ酸だけをみても劣化進行時の外観、すなわち「見え方」が異なることがお分かりになったと思います。

そしてこれに加え、劣化判断を行う際の留意点が異なることは盲点かもしれません。

 

【薬液の種類が違っても共通して見られること】

 

薬液の種類によらず、薬液がFRP内に浸透した場合に共通して見られる事象もあります。

それが、

「FRPタンク内の異臭」

です。

 

劣化診断の前に薬液を抜いたうえで水洗浄を行っても、薬液がタンク内壁面に浸透している場合、タンク内部で強い異臭が残留します。

 

これは、壁面に浸透した薬液が水洗浄後も残留した薬液が揮発する、

またはFRPのマトリックス樹脂が、薬液より加水分解して生じた低分子化した揮発性化合物に由来するものと考えています。

 

当社では、ガス検知管を用いて薬液ガス濃度を計測し、劣化診断作業安全性の確保に活用するとともに、当該濃度を劣化診断の一指標とすることも検討しています。

 

今号では、薬液の違いによってFRPの劣化の見え方が変わることについてご紹介しました。

 

次号メルマガでは、タンク本体だけでなく、液面部、気相部、配管、継手など、部位によってなぜ見るべき点が変わるのか、についてご紹介したいと思います。

 

FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。