メールマガジン / 第64回
2026年8月3日
第六十四回:FRP製品の真実
FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組
~劣化診断に適用する非破壊検査導入に向けた検証と適用の課題
前号のメルマガでは、劣化診断に適用する技術データ取得と劣化予測への活用についてご紹介しました。
劣化診断の信頼性を高めるには愚直にデータを蓄積し、
それを適切な数学理論に基づいて解釈することが前提になるという当社の考え方をお感じ頂けたかもしません。
はじめに
今号では劣化診断に向けた当社のもう一つの取り組みである、
非破壊検査について述べたいと思います。
当社の劣化診断に対する非破壊検査技術導入の検証
バーコル硬度を用いた検査法は既にご紹介しました。
これに加え、現在導入に向け検証を続けているのが超音波探傷と画像診断です。
どちらの技術も、例えばタンクの様な耐食機器について薬液などの内容液が充填された状態で診断できることが強みとなります。
それぞれについて概要を述べます。
超音波探傷は底面波の検出がカギとなる
超音波探傷は技術を有するパートナー企業とともに、
耐食機器の劣化診断への適用に向けた検証を共同開発の形で進めています。
周波数設定や出力を含む探傷プローブの選定や探傷手法の改善により、
かなり厚手のものであっても探傷が可能となってきました。
その中でポイントとなるのは底面波の検出です。
劣化診断に必須なのはFRP劣化に伴うエコー特性の変化の理解
劣化診断に重要なのはエコー特性に対する変化の理解です。
既に現段階でも大型の耐食機器の検査は可能になりつつありますが、
劣化診断で重要なのは既に述べた通り内容液が充填された状態での評価可否です。
内容液が充填された耐食機器を外部から探傷する場合、
壁面構造材であるFRPの劣化、すなわちFRP中に内容液が拡散、浸透するため、
FRPと内容液界面での音響インピーダンスの差が不明瞭になりがちです。
つまり、仮に超音波が底面まで到達したとしても明確な底面波を検知できないのです。
一般的な超音波探傷のキズ判定であるキズエコーを捉えるという考え方は、
耐食機器の構造材であるFRPそのものに空隙や剥離などの“欠陥”を検知するのに有効です。
ただ当社では評価したいものが耐食機器の“劣化”であるため、
明確な反射エコーを捉えるという考え方にとらわれてはいけないと考えています。
現段階では現場で実証できていないため仮説でしかありませんが、
FRPが劣化するとエコーの形状や位置が変化する可能性があります。
耐食機器に使用されているFRPが内容液によってどのように劣化が進行するのかを評価するには、
少なくとも底面波を捉えることが重要です。
これを明確に実地で実現できていないことが現段階の課題と言えます。
内容液と耐食機器の壁面であるFRPの界面で生じる底面波を安定して捉えたうえで、
劣化進行でどのように各反射波が変化するか。
本点についてパートナー企業と連携し、継続して共同開発を進めていきます。
画像認識を応用した寸法計測では安定した基準寸法計測が重要
内容液が充填された耐食機器の劣化診断に向け、
もう一つ当社で取り組んでいるのは画像認識の応用です。
これは耐食機器が内容液の浸透、拡散によって劣化が進行すると、
構造部材の弾性率が低下して内容液の水圧で変形するのではないか、
という仮説に基づいたアプローチです。
当社では一定基準寸法を示す画像を用いながら、
規定期間ごとにその寸法を画像認識によって寸法として計測し、
寸法変化をモニタリングすることを目指しています。
内容液が強酸等の薬液であることも多い耐食機器を、
直接触れさせずに計測できるという意味で柔軟性が高い非破壊検査技術であると考えています。
画像認識では基準寸法を安定して捉えることが難しい
画像認識を応用した劣化診断で課題となるのは、
安定した基準寸法計測の実現です。
実測データの蓄積はこれからですが、寸法“変化”を見るには基準寸法をどれだけ精度よく計測できるかが重要となります。
耐食機器が設置されたような現場で天候や計測時間帯で変動する光量を中心とした外的要因の影響を排除しながら、
どのレベルで安定して基準寸法を計測できるかを、
実地での検証を続けながらその妥当性を検証していく予定です。
実地データを蓄積しながら課題解決に向けた画像認識のアルゴリズムの修正や、
基準寸法の付与方法、計測方法の最適化といった取り組みが必要であると考えます。
今号では、劣化診断に適用する非破壊検査導入に向けた検証と適用の課題についてご紹介しました。
次号メルマガではFRP職人にしか分からない感覚的なことへの検証をご紹介したいと思います。
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