株式会社 FRPカジ メールマガジン
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2023年9月1日
第二十九回:FRP製品の真実~50年前に製作したFRP製品特性評価の
考察とまとめ2
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・FRP製品の真実~50年前に製作したFRP製品特性評価結の考察とまとめ2
<FRP製品の真実~50年前に製作したFRP製品特性評価の考察とまとめ2>
前回までのメルマガではFRP製品の真実として、
約50年間屋外で曝露されたFRP(ガラス繊維/不飽和ポリエステル)に関して、
4回に渡りFRP製品特性評価を開始した背景、FRP製品特性評価法、FRP製品特性評価結果についてご紹介しました。
今回のメルマガではFRP製品の真実~50年前に製作したFRP製品特性評価結果の
「層間剥離/表層の亀裂と破壊位置の関係」に関する考察と、
全体のまとめについて述べたいと思います。
〈引張試験片の層間剥離/表層の亀裂と破壊位置の関係について〉
長期屋外曝露を行ったFRPの引張試験片では、
層間剥離や表層の剥離が複数認められました。
多くの引張試験片について、
引張試験後の観察においてこの初期損傷と破壊位置に相関は認められませんでしたが、
2つの試験片についてその関係性を疑わせる事象を確認しました。
長期曝露を行った試験片の一部には長期屋外曝露に伴う層間剝離が生じていました。
層間剥離部分は黒く変色し、
引張試験片両端においてその剥離を確認しました。
この引張試験片については当該層間剝離箇所が破壊位置と一致しており、
剥離端部の応力集中が破壊の起点となったことを示していると考えられます。
よって、長期曝露による劣化で生じた層間剝離が破壊の起点になるという経験則に基づく考え方の妥当性が示されたといえます。
また、別の長期曝露した試験片では、水性ゾラコートの表層クラックが生じていました。
これは長期曝露されたFRP成形体から引張試験片を切り出すという加工時に、
FRP平板自体が有する厚み方向の3D形状を平面に変形させる(固定する/矯正する)際に生じた応力が発生の主因だと推測します。
引張試験後、表層に亀裂が認められた付近で当該試験片の破壊が生じました。
これは表層の亀裂が直接的な破壊の起点となったのではなく、
亀裂が生じている箇所付近では上記の応力発生に伴うマトリックス樹脂の微小破壊(主にトランスバースクラック)が発生した可能性があり、
当該微小破壊が引張試験片の最終破壊の起点となったと考えられます。
このようにいくつかの引張試験片について、
引張試験片加工時の微小破壊という初期欠陥が引張試験実施時の破壊に影響を与えた可能性があるものの、
表層に生じた亀裂は試験片が形状を有する故に回避が困難であったことから、
今回得られた引張試験結果の妥当性に大きな影響を与えるものではないと考えます。
そして層間剝離は屋外曝露によって生じた劣化事象の一つであり、これが破壊の起点となっていることが示唆された引張試験片も存在したことから、
長期曝露がFRPの破壊を助長させる現象である事が、より客観的かつ定量的に示されたと判断します。
【まとめ】
長い期間屋外に曝露されたFRPに対し、
引張特性を中心とした材料特性取得、
並びに化学構造分析を行うことによる基礎データの取得にそれぞれ成功しました。
さらに同等組成のFRPとの特性比較を行うことで、
硬度に顕著な変化が見られなかった一方、
引張弾性率は2割程度、
引張強度は半分程度まで低下するという現象が確認されました。
さらに、引張試験片の初期状態と試験後の破壊形態を確認した結果、長期曝露によって生じた層間剝離が破壊の起点となることも示されました。
FRPを屋外曝露した際に生じる特性変化理解につながる貴重な技術情報であると考えます。
今回得られた知見を、当社製品の長期寿命評価法の指針を決めるにあたっての一助とし、
自社技術知見向上に活用していく所存です。
今号では約50年間屋外で曝露されたFRP(ガラス繊維/不飽和ポリエステル)に関して、特性評価の考察とまとめについてご紹介しました。
次号メルマガでは、FRP製品の真実~50年前に製作したFRP製品特性評価の考察とまとめについて述べたいと思います。
FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。