toggle
FRP製品を笑顔と共に

第三十八回:FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組 ~当社独自の劣化診断法1

株式会社 FRPカジ メールマガジン

┏┏┏┏ ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

┏┏┏┏ ハンドレイアップGFRPの真実

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

2024年6月3日

 

第三十八回:FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組

~当社独自の劣化診断法1

 

 

<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━

 

・FRP製品の真実~FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~当社独自の

劣化診断法1

 

前回メルマガではFRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組として、

耐食機器のFRPS C003-2018 ガラス繊維強化プラスチック製耐食機器の性能検査指針(以下、性能検査指針)から考える検討必要性についてご紹介しました。

 

今回はFRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組について当社独自の劣化診断法1をご紹介したいと思います。

 

当社独自の劣化診断法とは、

他素材や他機構製品等向けに行われてきた既存検査方法や、

性能検査指針に記載はあるもののFRP劣化診断として実用に課題のあるものを、

独自にアレンジしてFRP製品等に対して活用するものを指しています。

 

当社の劣化診断法の中でコストを抑えながらも診断効果の高いもののひとつとして、

 

「浸透探傷法」

 

があります。

 

浸透探傷法は金属の溶接部の表層欠陥確認に多く使用される試験法で、

通称「PT」と呼ばれる方が多いですが、

FRPの検査ではそれほど多く行われていません。

 

当社ではJIS Z2343-1に則り、

FRPの材料特性に影響が出ないよう水溶性の染色浸透探傷(PT)剤を用いています。

 

当社の劣化診断における、浸透探傷の手順概要、メリット、デメリットについてそれぞれ以下の通り述べます。

 

〈浸透探傷手順概要〉

 

1.           当該試験箇所を洗浄

2.           染色浸透液を塗布

3.           30分程度で払拭

4.           現像剤塗布

5.           当該箇所に浸透液が浮かび上がるか確認

6.           3種類(独立浸透、連続浸透、分散浸透)の指示模様で識別

7.           現像剤払拭

 

〈メリット〉

 

・低コスト

・短時間で検査実施可能

・目視ではわからない、もしくは見逃す可能性のあるクラックや割れの明確化

・ある程度の範囲を同時に検査可能

 

〈デメリット〉

 

・FRPの薬品タンク内等では洗浄剤に溶剤が使用できない場合がある(薬品等の相性)

・染色浸透液、現像剤、洗浄液は消防法の危険物に該当する場合が多く、施主の規則によってはこれらの薬剤の使用許可取得が難しい(引火危険性がなく、危険物対象外の製品も一部存在)

・検査できるのは表面付近だけであり、複層構造のFRP内部は検査できない

 

デメリットの3点目を深堀りしたいと思います。

 

もともと金属材料で浸透探傷が使われるのは、

異方性のない金属は表面から結晶粒界などに沿って破壊が進展することが多いためです。

 

それに対してFRPは材料を積み重ねる「積層(レイアップとも言います)」するため、

材料が複数層で構成されます。

 

このような場合、表層に存在する欠陥が仮に厚み方向に進展したとしても、

その下層にある材料の層に到達した時点で積層方向と平行(面内方向)に進展することが主となります。

 

もちろんすべての強化繊維が厚み方向に積層されていれば話は別ですが、

このような積層構成を採用する構造部材はほとんどありません。

 

その一方で劣化診断を通じてとらえたい現象は、

 

「FRPの槽やタンクの中に貯蔵される、もしくは同材料の配管の中を通過する薬液や水等の“浸透”」

 

です。

 

“浸透”は拡散現象ですので面内方向だけでなく厚み方向、

つまり層間方向(面外方向)でも起こります。

 

そして薬液等を保管するFRPの劣化は、

表層のひび、割れなどを起点として深さ方向に進むことがわかっているため、

浸透探傷によって表層の欠陥をとらえることは、

劣化状態を適切に判断するために有効であると考えています。

 

今号ではFRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~当社独自の劣化診断法1として、浸透探傷法についてご紹介しました。

 

 

次号メルマガでは、FRP製耐食機器劣化損傷判定への新たな取組~当社独自の劣化診断法2として独自の劣化診断法について詳しくご紹介したいと思います。

 

FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。