株式会社 FRPカジ メールマガジン
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2024年12月3日
第四十四回:FRP製品の真実~ FRP100%リサイクルへの挑戦: FRP廃棄物
処理事業開始とサプライヤチェーン構築の経緯
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・FRP製品の真実~FRP100%リサイクルへの挑戦: FRP廃棄物処理事業開始とサプライヤチェーン構築の経緯
前回メルマガでは塩酸使用工場劣化の解決に向けたFRP特殊塗装工法®の活用という観点についてご紹介しました。
今回は2024年7月に当社と協力企業により構築した、FRPを100%リサイクルすることへの挑戦に関する取り組み開始の経緯として、
主に2019年3月より開始したFRP廃棄物処理事業立ち上げを中心にご紹介します。
【FRPリサイクルへの序章は徹底した分別から】
一足飛びに理想的な形であるFRP100%リサイクルに到達することは困難である。
これはFRP100%リサイクルに関する事業設計の初期段階で直面した課題でした。
そこで種々社内での検討の結果、初期段階として行える
「最大限に地球環境に優しい廃棄物処理方法」
を模索した結果、廃棄物となる既存FRP製品解体時にFRP、金属、木材等々を徹底的に分別類し、
埋め立て廃棄を最小化する処理方法の確立を第一目標として目指すこととしました。
【FRP分別は簡単ではない】
FRPは主に無機物質の強化繊維と有機物質の樹脂(高分子)を組み合わせた複合材料であるため材料取り扱いに専門知識が必要である上、
一般成形体や耐食成形体といった用途によって異なる構造で設計、製造されます。
さらに、FRP単体ではなく金属との複合体として用いられることが多く、
廃棄処理する際には材料に対する知識に加え、
FRP成形体やFRP複合成形体の構造を理解することが、
適切な分別を効率的に行うにあたり必須です。
分別をリサイクルの初期目標に設定するのは自然と感じる方もいるかと思いますが、
それを実行するのは簡単ではないのです。
【FRP分別に必要な技術と設備を有する協力企業との協業体制を開始】
当社はFRP設計、製造に関する長年の経験に裏付けられた知見を有していますが、
廃棄されるFRP製品の分別作業を実行に移す段階でいくつかの障害が想定されました。
その障害の一つが、対応キャパシティーの限界です。
特に大型のFRP製品を分別しようとすると、
仮に分解方法の適切な方針が示せたとしても人力で対応することが難しいことも多く、
機械設備の活用が必要となることが多いのが実情です。
一方で分別を意識せず、やみくもに破壊だけするような設備では、
リサイクルの実現が遠のいてしまいます。
そこで分別リサイクルについて設備と知見を有する協力企業と議論を重ね、
当社が求めるやり方で分別できる体制について模索しました。
これらの議論と模索の結果、当社の指示内容に基づいて適切な分別を実行できる体制の構築にこぎつけました。
【協業体制をさらに発展させたサプライヤチェーンにより分別だけでなく適切な処理まで完結する体制を実現】
当初構築した協業体制に不足していたのが、分別の次にあるリサイクルを中心とした処理方法の最適化です。
ここで重要となるのが分別後の廃棄物をリサイクル材として活用する出口戦略です。
本観点を念頭に、該当する設備とニーズを有する企業との連携を進めたことで、
協業体制をさらに発展させたサプライヤチェーンを構築し、
2024年7月に実運用を開始しました。
構築したサプライヤチェーンでは従来の分別に加え、
発生した廃棄物を可能なものはマテリアルリサイクル、
それ以外のものもサーマルリサイクルに回すなどして廃棄物の有効活用と最小化を進め、
FRPの再利用徹底と、FRP製品に用いられる他材料の埋め立て廃棄を最小化する体制を実現しています。
これにより、FRP100%リサイクルへの挑戦が本格的に始まったといえます。
【当社のFRP100%リサイクルを目指した新事業創出に対する執念がすべての出発点だった】
当社は以前より、高機能、高品質のFRP製品をお客様に提供してまいりました。今もその姿勢は変わりありません。
そのような日々の中で、従業員の気持ちのどこかに「つくる」だけでいいのか、
という疑問が生じたのは自然の流れだったのかもしれません。
FRPのリサイクルを社内で議論し始めた当時、
世界的に見てもFRP製品のリサイクルは、
船舶の粉砕したものをセメントや舗装材に混練するといった限られた事例以外は見当たりませんでした。
当時の社内での議論を振り返ると、
FRPは軽量化や耐腐食性を実現するための高機能材料として今後ますます需要が高まると予想されているが、
それだけでなく、限りある資源、そして次世代のためこの地球を守るために当社ができることを考えるべきではないか、という話が多かったと感じています。
これら社内の声を踏まえ、新規事業構想の検討を重ねてまいりました。
結果、従来のように製品を「つくる」だけでなく、
適切に「処理する」ことでFRPという材料のトータルマテリアルサイクルを提案するということの重要性に議論が収束いたしました。
社内でこのような議論が生まれたことは喜ばしいことであると同時に、
技術的課題だけでなく、事業的課題を解決し、
新事業創出を実現するのが経営陣としての責任であると考えました。
社内だけでなく、社外での議論を重ねながらFRP廃棄物処理事業開始とサプライヤチェーン構築を実現できたのは、
経営陣の執念ともいえる気持ちの部分が大きかったとも言えます。
今号ではFRP100%リサイクルへの挑戦に至るまでの序章となる、
FRP廃棄物処理事業開始とサプライヤチェーン構築の経緯ついてご紹介しました。
次号では当社が構築した、FRP100%リサイクルに至るまでの過程についてご紹介します。
FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。