沿岸地域での腐食回避に向けたプラント保全の盲点となる地域差と必要な対応~【FRPエンジニアによるコラム】より
長年某プラントメーカーの設計として、第一線で活躍されていた方のお話しを聞く機会があり、驚くことばかりでした。
この方は誰でもがご存知の日本中の沿岸地域に点在する重要なプラントを担ってきた実績をお持ちで、特に塗装に関しても精通されているようです。
お話しは大きく分けると2点あり、1点目は沿岸地域の塩害に地域差が存在する点です。
2点目はプラントでの塗装は塗料メーカーの推奨通りの点検と対応しか行わない点です。
私はこの2点は客観的に見ると全く関係性がないように思えますが、海に囲まれた日本国にとっては非常に大事な関係性があると思います。
塩害の地域差
塗装仕様は全く変わりがないのに地域により塩害腐食に差異が発生するということは、それぞれ地域により風向きや塩分濃度や様々な要因による違いがあるのではないかと考えます。
国土交通省や東京電力が公開している塩害地域資料等を見てみると埋め立て地が多く、土壌に海水が浸透している東京湾沿岸での塩害被害は当然の事だと思います。
しかし、実際には同じ設計で同じ設備のプラントで比較すると東京湾沿岸より福島県沿岸の方が、腐食スピードは速いとの事です。
理由は分からないようですが、私が思うに東京湾沿岸は河川からの淡水が流れ込んでいるので塩分濃度が低く影響を受けにくい等が考えられます。
このような沿岸部の塩害という現象に、地域差が認められるのは盲点とも言えます。
塗料メーカー推奨の点検と対応への依存
沿岸部において塩害等により鋼材等の腐食を防ぐには塗装とライニングが想定されますが、根本的に定期的にメーカー推奨の塗装やライニングを施していれば補償もあるので、長期視点での点検や対応という取り組みが進展していなのではと思っています。
塩害地域での塗料メーカー対応はそれぞれ違いがあると思われるので、一概に全て補償があるとも思いませんが、基本的に1年間補償が多いのでプラント側も1年に1回の定期修繕により塗装塗り替えを実施していると思います。
1年に1回塗装を塗り替えるためには必ず下地調整が必要で、塩害により母材が腐食すると、その錆を除去する毎に肉厚は減少します。
このような減肉減少により、母材の機械特性が変化することは想像に難くありません。
1年に一回の塗装塗り替えで上記のような母材の腐食が見られる場合は、塗装の塗り替え頻度を高めるか、塗料そのものをより高耐食のものに変更する必要がある可能性もあります。
つまり、使用環境によって変化する腐食状況を踏まえ、適した保守点検条件をユーザー側も考えることが求められるのです。
今回例として示した保守点検が続くと、10年20年経過した際に大きな事故を引き起こす要因になり得るのではないかと危惧しています。
塗料メーカーは日々研究を行っている結果、塗料そのものの性能は進化していますが、地域差という不確定要素の影響も存在する沿岸部のプラントの塩害に対する保全に関して、適切な検討がなされているのかは懐疑的です。
あくまでも塗料メーカー推奨はしっかりとした母材があっての事だと考える必要があるのだと考えてみたらどうでしょう。