toggle
FRP製品を笑顔と共に
2021-10-10

地震によるマンション貯水槽の危機~【FRPエンジニアによるコラム】より

2021年10月3日、和歌山市の「紀の川」にかかる水管橋と呼ばれる送水用の橋の一部が崩落により6万戸が断水というニュースが飛び込んできました。

私が驚いた事は、平行して架かる橋からの目視検査によってのみ劣化診断を行っていたことであり、

すぐに連想できることが頭に浮かびました。

マンション貯水槽

「マンション貯水槽が危険だ」

理由は3年ほど前よりマンションや工場の貯水槽・受水槽などのFRP製パネルタンクが微震により崩壊したり、水漏れが多発していたことによる、補修依頼や問い合わせが増えていたからです。

 

実際のメカニズムとして、水の揺れによって貯水槽が損傷することが知られており、

中央大学では浮体式波動抑制装置によって、その問題を解決しようという取り組みもなされています。

https://hirano.r.chuo-u.ac.jp/sloshing/

 

メーカー撤退によってマンション貯水槽管理がますます困難に

マンション貯水槽をはじめとしたFRP製パネルタンクは大手企業が手掛けていましたが、10年ほど前より撤退する企業が増加しています。

業界内での取り決めにより設置後15年間の補償期間はあったようですが、期間を経過した物件はメーカー関係メンテナンス企業が劣化診断を含め行っています。

 

私も補修依頼が多いために主要メーカーに資料を共有いただきたいと問い合わせをしましたが、

驚いたことに20年、30年前に製造したFRP製パネルタンク製作図面は保管していないとの回答。

さらに驚くことに、メンテナンス企業の劣化診断法は上述した和歌山市内で崩落した水道橋と同様に、

 

「目視検査のみ」

 

との回答でした。

 

 

当社が日常業務で行う劣化診断はJIS規格がある薬液タンク以外のパネルタンク等に対しても、

膜厚・硬度・特殊カメラによる内部調査等を含めた劣化診断を行い、成果物として検査成績表も発行するのが当たり前となっていたので大変困惑しました。

マンション貯水槽崩壊

 

1番の心配は最近続発している地震により、マンション等の20年以上経過した貯水槽が損傷して漏水が発生し、給水できなくなることに加え、最悪は崩壊して人的被害に及ぶのではないかと危惧しています。

 

FRPの特性を理解して目視検査だけでなく、しっかりしたメンテナンスを行っていただきたいと思います。

 

関連記事