株式会社 FRPカジ メールマガジン
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2025年11月4日
第五十五回:現地施工で見られるビス系ビニルエステルの硬化不良発生
~ 硬化剤添加後の撹拌不足~
<目次> ━━━━━━━━━━━━━━━━
・FRP製品の真実~現地施工で見られるビス系ビニルエステルの硬化不良発生~硬化剤添加後の撹拌不足
前回のメルマガではビスフェノール系(ビス系)ビニルエステルの硬化不良の初歩的要因として、促進剤添加量過不足と手順違い(3液性の場合)についてご紹介しました。
今回は現地施工時における硬化剤添加後に撹拌不足による当該硬化不良について述べてみたいと思います。
【現地施工におけるビスフェノール系ビニルエステル樹脂硬化不良の初歩的要因】
現地施工において、ビスフェノール系ビニルエステル樹脂硬化不良の初歩的要因として、
以下の6点が挙げられることは既に述べました。
‐硬化剤添加量過不足
‐促進剤添加量過不足と手順違い(3液性の場合)
‐硬化剤添加後の撹拌不足
‐強化材(チョップドストランドマット等)が水等を吸収している
‐積層下地やライニング下地の水滴等
‐樹脂塗布用の刷毛・ローラー類に水やアセトンが除去されていない
※参照コラム
第五十三回:ビス系ビニルエステルの硬化不良発生
https://x.gd/CQUKH
今回は3点目の“硬化剤添加後の撹拌不足”ついて解説します。
【撹拌不足は適切な硬化剤量が添加されても生じうる】
前々回のメルマガでは硬化剤添加量過不足について述べましたが、
これは硬化剤を規定量添加したか否かが原因で起こります。
一方で硬化剤添加後の撹拌不足とは、
規定の硬化剤を添加したとしても起こり得る現象です。
添加すべき材料量の多い少ないは硬化不良の原因として比較的イメージしやすいかもしれませんが、
それと比べて後工程の撹拌に対する注意が払われにくくなることは想像に難くないと思います。
【撹拌不足のリスクを低減させるための当社の取り組み】
当社では撹拌不足がビスフェノール系ビニルエステル樹脂硬化不良の原因になるとの認識のもと、
いくつかの取り組みを行っています。
以下、本件に対する当社の取り組みと事象例をご紹介します。
〈撹拌不足のリスク低減を目指した当社の撹拌手順設定〉
撹拌不足のリスク低減に向け、当社で行っている取り組みの一つが
「定量指標に基づく撹拌手順設定とその遵守」
です。
規定量の硬化剤を添付した後、撹拌器にて撹拌を行うのが一般的ですが、
この撹拌について規定、または一般化された手順はなく、各施工会社や個人で様々です。
当社では撹拌に調理用泡だて器を用いています。
調理用泡だて器はその細かいワイヤの存在によって撹拌中の液体物内に乱流を発生させる効果があります。
撹拌による均一分散に必要な乱流の発生は重要な技術要素と考えています。
そして、時計回りに20回~30回、反時計回りに20回~30回程度撹拌することを統一手順として設定しています。
攪拌の方向を変えるのは、撹拌不足領域を最小化することが目的です。
【硬化剤添加後の撹拌不足に関して現地施工で生じる事象例】
これは私の経験を踏まえての事例です。
一般的に現場での作業は1名が樹脂を作ります。
ここでいう「作る」とはマトリックス樹脂に規定の硬化剤を添加・撹拌を行ったことを指します。
余談ですが、施工会社や塗装業に関係があった方々は、
人によって樹脂を作る場所を「ネタ場」と言います。
樹脂を作って欲しい時には「ネタちょうだい」などと言います。
業界固有の表現はどこにでもあるものです。
話を戻します。
一般的な現場では樹脂を作る人1名、ライニングやオーバーレイする方が数名となります。
問題が起こりやすい状況は樹脂を作る方に、他の作業が重なることが要因となって構築されていきます。
例えば樹脂を作る人が、
施工している方々からマット(チョップドストランドマット)持ってきて、
ロービング(ロービングクロス)持ってきて等々を頼まれます。
要領よくできる方は良いですが、
そうでない方は樹脂作り以外に関して色々言われてしまい、焦って撹拌を疎かにすることもあり、
最悪は撹拌しない(撹拌し忘れる)場合も起こります。
このように現地施工で樹脂を作る人は余裕が無いことも多く、
硬化剤を添加した後の、重要であるものの地味な撹拌工程がおろそかになる可能性もゼロではありません。
繰り返しになりますが、現地施工では余裕のある状況で作業が進められるとは限らず、
一見して簡単な作業にも人的ミスが生じることも珍しくないのです。
今号ではビスフェノール系ビニルエステルの硬化不良の初歩的要因として、硬化剤添加後の撹拌不足について、ご説明させていただきました。
次号では硬化不良の初歩的要因として、強化材(チョップドストランドマット等)が水等を吸収している場合に起こる要因についてご紹介します。
FRPを取り扱っている方や今後取り扱いたい方にとっての一助となれば幸いです。











